Seminar 2016 / セミナー情報2016
Chiral magnetic effect without chirality source in asymmetric Weyl semimetals
2016年11月28日(月) 13:30 @H524
Speaker:
菊池 勇太 氏 (京大)
Abstract:
左・右手型のワイルコーンが異なる分散を持つワイル半金属における新しいタイプのカイラル磁気効果について議論する。そのような系で は時間依存する電子の供給により有限のカイラル化学ポテンシャルを実現することができる。このようにして得られたカイラル化学ポテン シャル、カイラル量子異常により外部磁場の方向に電流を誘起する。本講演では、カイラルボルツマン理論と有効場の理論を用いてこの効 果を議論する。
Generalized Beth--Uhlenbeck approach to quark-hadron matter
2016年11月4日(金) 14:00-15:00 @H524
Speaker:
David Blaschke 氏 (University of Wroclaw; JINR Dubna; MEPhI Moscow)
Abstract:
Hadronic correlations (bound and scattering states) in quark matter are
considered within the Phi-derivable approach to the thermodynamic potential.
It is shown that in the two-loop approximation for the Phi-functional of this
fermion-composite boson system important cancellations hold which are
one key element in the proof that the thermodynamic potential takes the form
of a generalized Beth-Uhlenbeck formula. The other element are generalized
optical theorems.
In the near mass-shell limit, contrary to naive expectations, the density of
states reduces not to a Lorentzian but rather to a so-called «squared Lorentzian» shape.
The developed formalism extends the validity of the Beth-Uhlenbeck
approach beyond the low-density limit. It includes the Mott-dissociation of
bound states in accordance with the Levinson theorem and the selfconsistent
backreaction of the correlations to the propagation of the elementary fermions.
A fair description of lattice QCD thermodynamics is achieved. Applications
to the study of dense quark-hadron matter in heavy-ion collisions and in
compact stars are discussed.
非一様カイラル相転移における揺らぎの効果
2016年7月29日(金) 13:30 @H524
Speaker:
吉池 遼 氏 (京大)
Abstract:
空間的に変動する秩序変数で記述される非一様相への転移について、相境界近傍での通常相での秩序変数のゆらぎの特徴、相転移への効果について議論する。特に非一様カイラル転移では、クォークー反クォーク、粒子ー空孔対からなるカイラル対のゆらぎを考える。一つの結果として、Brazovskii-Dyugaev効果と呼ばれる効果によって、相転移の次数が変化することが挙げられる。この効果に寄与する量子ゆらぎおよび熱ゆらぎの役割を明らかにする。また、両者の役割は非一様相におけるゆらぎの特徴および、相の構造不安定性と密接な関係にあることが示唆される。最後にこのようなゆらぎの効果の現象論的意義を見るために、エントロピー、粒子数などの熱力学的諸量の振る舞いについて議論したい。
高エネルギー物理学におけるトポロジカル輸送現象
2016年7月22日(金) 13:30 @H524
Speaker:
山本 直希 氏 (慶應義塾大)
Abstract:
輸送方程式(ボルツマン方程式)は、物性・原子核・宇宙物理など様々な系において輸送現象を記述する基礎理論として重要である。
しかしながら、高エネルギー物理学における従来の相対論的な輸送理論では、フェルミオンのカイラリティーに起因するトポロジーの効果が見落とされていたという問題点がある。
本セミナーでは、物性物理でよく知られているベリー曲率によって、輸送方程式にトポロジーの効果を取り入れることができることを示し、その高エネルギー物理現象への応用について議論する。
特に、修正された輸送理論が、カイラルプラズマ不安定性という新奇な不安定性を引き起こすことを示す。
また、これらの宇宙物理への応用についても紹介する。
高エネルギー重イオン衝突で探るハドロン相互作用
2016年6月24日(金) 13:30 @H524
Speaker:
森田 健司 氏 (京大基研)
Abstract:
ハドロン間相互作用の理解は、ハドロン物理の大きな課題であり、理論・実験ともに盛んに研究されている。
特に、ハイペロン-核子またはハイペロン相互作用は、H-ダイバリオン等のエキゾチックハドロンの存在や、中性子星物質の性質を理解するのに 重要な役割を担っているが、ハイパー核実験等で調べられる系は限られており、多くはまだ理解されていない。
RHICやLHCでの重イオン衝突では、QGPからのハドロン化を通じて多くの粒子が生成され、その2体相関を通じて、相互作用に関する情報 を得ることができる。
2体相関関数は同種粒子では波動関数の(反)対称化を通じて粒子源の有効サイズの情報をもっているため、これまでは高温・高密度物質の時空発 展を探るために測定されてきたが、終状態相互作用による相関は粒子の種類を問わず適用でき、他の実験で測るのが難しい粒子の相互作用を探るの に有用であると考えられる。
実際、RHICのSTAR実験において、反陽子同士、ラムダ粒子同士の相関関数が測定されており、そこから相互作用の性質が議論されている。
本講演では、まず重イオン衝突で測られる粒子相関について、粒子源サイズや相互作用との関係をまとめた後、具体例としてラムダーラムダ相関と 陽子ーオメガ相関について述べる。
微視的核反応論の進展とその応用
2016年5月20日(金) 15:00 @H524
Speaker:
蓑茂 工将 氏 (阪大RCNP)
Abstract:
有効相互作用に基づく微視的核反応論は, 核子-核散乱, および核-核散乱を記述する簡便かつ実効的な方法である.
有効相互作用は多重散乱理論を基礎として導入され, 基本的には, 有効相互作用としてg行列相互作用が用いられる.
核力研究の発展と共に有効相互作用の構築も着実に進展しており, いまや, 定量性を持った実用的な有効相互作用が幾つか提案されている.
有効相互作用を用いて理論的に構築された光学ポテンシャルの信頼性も非常に高く, 微視的反応論は, 現象論的アプローチが通用しない場でも多数の活躍を収めている.
本講演では, まず多重散乱理論に基づいた多体問題へのアプローチを説明し, g行列畳み込み模型による核反応の記述について概観する.
その後, カイラル有効場理論に基づく核力に立脚した微視的核反応論の現状を紹介し, 反応を通じて3核子力効果を”観測”する試みについて話す.
ユニタリー結合チャネル模型による D+ --> K- pi+ pi+ 崩壊のダリッツプロット解析
2016年5月20日(金) 13:30 @H524
Speaker:
中村 聡 氏 (阪大)
Abstract:
ダリッツプロット解析はハドロン共鳴の決定や、CPが破れる過程の解析を通じた標準模型を超える物理の探索などに広く用いられている。
本講演ではまずダリッツプロット解析の方法を初歩的な所から始め、通常よく用いられるアイソバー模型を導入し、その模型を用いた共鳴の性質の決定法や、ユニタリートライアングルの角度の決め方を例を挙げながら説明する。
次にアイソバー模型がハドロンの多重散乱を陽に考慮していない問題点を指摘し、その問題を克服した模型としてユニタリー結合チャネル模型を導入する。
結合チャネル模型とアイソバー模型でダリッツプロット解析を行ったときにどのような違いが現れるかを調べるため、具体例として D+ --> K- pi+ pi+ 崩壊のダリッツプロットを解析する。
ハドロンの多重散乱の効果は大きく、崩壊振幅の決定にこれを陽に考慮することが重要であることを示す。
重イオン衝突実験での非ガウスゆらぎ観測における検出効率の問題
2016年5月13日(金) 13:30 @H524
Speaker:
北澤 正清 氏 (阪大)
Abstract:
重イオン衝突実験における保存電荷の非ガウスゆらぎは、衝突初期の熱力学を探るための有用な観測量として注目されており、近年理論・実験の双方により活発に研究されている。保存電荷ゆらぎの実験的観測においては、各衝突イベント毎に
検出器のある領域で観測される電荷数を数える、イベント毎解析という解析手法が用いられる。この際、検出器に到達する全粒子が確実に観測できれば問題ないのだが、
現実の検出器は有限の検出効率でしか電荷の検出ができないため、この影響により観測されるゆらぎは真の値から変更を受ける。有限の検出効率がゆらぎの観測値に及ぼす効果およびその補正法は最近議論され始めた新しい話題で、最近の進展によりその重要性が
認識されつつある。
本講演では、ゆらぎに対する検出効率補正の問題と、特に観測する量が異なる検出効率で観測される量の線型結合で与えられる場合に、検出効率補正を効率的に遂行する方法論について議論する。
Kinetic regime of hydrodynamic fluctuations
2016年4月22日(金) 13:30 @H524
Speaker:
赤松 幸尚 氏 (阪大)
Abstract:
流体力学は平衡状態近くの有効理論であり、相対論的重イオン衝突で作られる超高温物質の記述に適用されてきた。昨今、揺らぎに関する観測量 に注目が集まってきており、揺らぎの源についての理解が求められている。揺らぎの源としては主として、初期条件に関する量子揺らぎ、及び揺動 散逸定理によって要請される熱的揺らぎがある。
今回のセミナーでは、与えられた背景流中でスケールの分離を行うことで、流体力学における熱揺らぎについての新しい見方を紹介する。具体的 には、Bjorken膨張する背景流中でハードな流体モードの運動論的記述を導出し、粘性係数のくりこみ、長時間相関(Long-time tail)、粘性流体の微分展開の分数冪についての簡潔な理解を与える。