Seminar 2012 / セミナー情報2012

微視的理論による中性子過剰Ne同位体の系統的反応解析

2012年7月31日(火) 14:00 @H524
Speaker: 蓑茂 工将 氏 (九大理)

Abstract:
近年の実験技術の長足の進歩により, 不安定核の性質の解明は着実に進展し, その研究対象は比較的軽い中重核のドリップラインにまで迫っている. その代表例が31Neや33Mgなどの中性子過剰核であり, このような中性子ドリップライン近傍の中性子数20周辺の領域は ''island of inversion''と呼ばれ,大きな変形やハロー構造などの豊富な話題で注目を集めている. 現在, Ne同位体やMg同位体の全反応断面積(正確には相互作用断面積)などが 測定されており, これらを解析することによって, island of inversion核の性質の理解が進展すると期待されている. 全反応断面積は核の''半径''に敏感な量であり, 不安定核特有の核密度の広がりを顕著に反映する. 核の半径は変形やハロー構造によって著しく増加するため, 中性子過剰Ne同位体で測定された非常に大きな全反応断面積は, それらの可能性を強く示唆するものであった. したがって, この実験データを解析する際には, 変形やハロー構造の記述が本質的に重要となる. 本研究では, 反対称化分子動力学(Antisymmetrized Molecular Dynamics, AMD)と 二重畳み込み模型を組み合わせた微視的理論によって, 中性子過剰Ne同位体の全反応断面積を系統的に解析した[1]. AMDは, 変形やクラスター構造を記述する上で 極めて強力な手法である. これにより, 核の変形を考慮した反応計算を行う. この解析を通じ, island of inversion核の変形, さらにNeのハロー構造について定量的に議論する.
Reference [1] K. Minomo, T. Sumi, M. Kimura, K. Ogata, Y. R. Shimizu, and M. Yahiro, Phys. Rev. Lett. {¥bf 108}, 052503 (2012).

重力崩壊型超新星爆発シミュレーションのための原子核組成を含む状態方程式

2012年7月17日(火) 14:00 @H524
Speaker: 古澤 峻 氏 (早稲田大)

Abstract:
大質量星(太陽の10倍以上)の恒星が起こす超新星爆発のメカニズムは未だに解明されていない。 数多くの数値シミュレーションの結果は、爆発に成 功しなかったり、爆発しても爆発のエネルギーが足りず観測と矛盾している。 原因は、多次元効果、相対論の効果、ニュートリノ輻射輸送の近似的な扱 いに加え、核物質状態方程式が考えられる。 また、これまでの多くのシミュレーションでは、原子核とニュートリノの反応は、近似的に扱われたり、無 視されてきた。 そこで我々は、原子核の存在比を含むEOSを構築した。NSE(核統計平衡)を仮定し、原子核の質量は、高密度高温効果を含む液滴模型を使い、 Shell Energyやパスタ相も考慮した。 本セミナーではこのEOSモデルの説明と、最新の結果を議論する。

The Effects of mesonic fluctuations for QCD phase diagram and meson modes

2012年5月29日(火) 14:00 @H524
Speaker: 上門和彦 氏 (京大基研)

Abstract:
汎関数くりこみ群方程式は、有効作用に対する汎関数微分方程式で構成されており、 場の量子論の定式化の一つである。この方法を相転移の物理に応用 し、ソフトモードの寄与の足し上げを行うことで、 平均場近似を超えた臨界領域の解析が可能となる。
今回のセミナーでは、汎関数くりこみ群の方法をQCDのカイラル相転移に適用した研究について話をする。 汎関数くりこみ群を紹介したあとに有効な近似法について説明する。 その後、実際にQCDの有効模型についてくりこみ群方程式を解いた例を示す。 QCDの軸性アノマリーが有限温度で回復し た場合に起こる1次相転移の解析と、 フレーバーの非等方性がある場合のパイオン凝縮相への相転移についての解析の結果を示す。